“未完成”であり続ける。SKILLが掲げる独自の教育論
—SKILLという店名、そしてあの手書きのロゴにはどのような想いが込められているのですか?
岩本:実はロゴが手書きなのは、「ずっと未完成でありたい」という意志の表れなんです。「これで完璧だ」と思った瞬間に成長は止まる。僕もスタッフも、一生未完成のまま、新しい技術や時代を追い求め続けようぜっていうメッセージですね。

緑のラインは「目に優しい」というユニークな理由
後藤:その言葉通り、SKILLの教育スピードは凄まじいです。岩本さんの隣で、毎日泣きながらシャンプーしていたアシスタント時代が昨日のことのようです(笑)。
—泣きながら…! 厳しい修行時代があったのですね。
後藤:岩本さんの「感覚」を言語化して自分に落とし込むのが大変で。私は天才肌ではないので、岩本さんの指先の動きやハサミの角度を、とにかく理論的に分析してノートに書き殴っていました。
—そこで役立ったのが、学生時代のVR体験だったとお聞きしました。
後藤:そうなんです! ベルエポック時代、VRでトップスタイリストの「本人の視点」を擬似体験する授業があって。「あ、プロはここでハサミの角度をこう変えるんだ」というのを、一人称視点で脳に焼き付けていたんです。それがベースにあったから、岩本さんの高次元な技術も「理論」として整理しやすかったんだと思います。
岩本:それは今の世代の大きな武器だよね。僕たちの時代にはVRなんてなかったから、横から覗き込んで盗むしかなかった。でも、VRであらかじめ「正解の視点」を体感している子は、現場での吸収率が圧倒的に高い。愛夏のデビューまでの速さも、VRでの経験があったからこそだと思います。僕の学生時代にもVRがほしかったです。

学校では学べないメンズセットを学ぶため、
自身でお金を出してVRカリキュラムを受講していた愛夏さん
—個人の努力や最新ツールだけでなく、SKILL独自の教育カリキュラム自体もかなり緻密に作り込まれているそうですね。
岩本:そうなんです。うちのカリキュラムって、同業者に見せると結構引かれるくらい細かく作り込んでいるんですよ(笑)。ステップごとに動画が用意されていて、内容はかなり細かいです。ただ、設計する上で一番大切にしているのは、あくまで「誰でもできるようになるもの」に設定すること。そうしないと、下の子たちが置いていかれちゃいますから。
—それほど細分化されたカリキュラムがベースにあるのですね。
岩本:でも、これって一度作ったら終わりではなくて、時代の変化に合わせて常に中身を変えているんです。例えば同じ「マッシュ」というスタイルでも、今はフェザー系が流行っているならレイヤーを高めにした技術を取り入れたり。

精度の高いカリキュラムを拝見して驚く取材陣
—トレンドの移り変わりが激しいメンズヘア業界だからこそのスピード感ですね。カリキュラムの更新はどのように行っているのですか?
岩本:カリキュラムの作成は、会社全体でそれぞれの得意分野に合わせて担当を振り分けて行っています。しかも、定期的にカリキュラムを一掃していて、毎回ほぼ9割くらい中身が変わるんですよ。若いスタッフたちの方がトレンドを察知するスピードが圧倒的に速いので、みんなから意見を聞いて作っています。
—キャリアに関係なく、誰もが意見をしやすい環境が整っているのですね。
岩本:そうですね。みんなが意見を出し合って、常にアップデートしていくのがSKILLのスタイルです。SKILLでは「死語」を使わないというルールがあって、ネガティブな言葉や、誰かを下げるような言葉は使いません。言葉がその人の顔を作り、サロンの空気を作る。SKILLは「髪を通して自信を与える」場所。そういった環境も影響していると思います。
後藤:死語を使わないので、スタッフ自身が常にポジティブで、自信を持ちやすいと私も実感しています。実際、岩本さんはめちゃくちゃ褒めてくれます(笑)。小さな成功体験を積み重ねさせてくれるから、いつの間にか「自分ならできる」って思えるようになるんです!